トタン屋根とは鋼板に亜鉛メッキと塗膜を施した、日本の住宅で非常にありふれた屋根材です。
塗膜と亜鉛メッキによって鋼板がサビないよう保護されているわけですが、経年や損傷によりそれらコーティングが剝がれてしまうと、目に見えてサビが発生、広がっていきます。
サビがさらに進行し腐食すると穴が開き、そこから雨が侵入、雨漏りにつながるのです。
このような雨の侵入口、初期段階で発見できれば自分で応急処置ができるかもしれません。
ここでは、ホームセンターでも購入できるお手軽な防水材である「コーキング」でトタン屋根の雨漏りの補修ができるかを解説していこうと思います。
トタン屋根の雨漏りはコーキングで補修できる?
可能性から言えば、トタン屋根の雨漏りは軽度なものであれば、コーキングで対応できるケースもありえます。
はっきりとわかるトタンのサビや穴が目視で確認でき、そこが雨漏り箇所の真上である場合は、その箇所にコーキングを打つ価値はあるかと思います。
ただし、このような明確な雨漏り要因ばかりではありません。
改めて後ほど解説しますが、雨漏りの原因は様々です。数ある建物の修繕の中でも雨漏りの解消というのは難しい案件なのです。
コーキングによる雨漏り補修は、「できたらラッキー、できても応急処置」という気持ちでいた方が良いです。
雨漏りの補修に使用するコーキング材とは?
コーキング材とは、外壁をはじめとしたジョイント部や目地などに充填する(埋める)製品です。シーリング材と呼ばれることもありますが、基本的に同じものと捉えてよいです。
外装(サイディング張りなど)や設備工事などで水の侵入を防ぐために使われますが、不要なスキマを埋めるにも便利で、内装の仕上げにも使用されたりします。
乾いてからもゴムのような弾力性があるので緩衝材としての役割もあり、また接着剤としても優秀です。
屋根の雨漏りの補修に使用するコーキング材の選び方は?
コーキングとひとことで言ってもシリコンやアクリル、ウレタンと色々な種類があります。
トタンは「金属」なので、日光を浴びて高温になることを想定して選ばなければなりません。
コーキングの中でも一番ありふれている(ホームセンターでも取り扱い数が多い)シリコン製が耐熱性に加え、耐水性も高めなのでおすすめです。
ただし、シリコン製は「塗装が乗らない(上から塗装できない)」というデメリットがあります。
補修の上から塗装をするのであれば、変性シリコン製がおすすめです。こちらはコーキング上に塗装ができます。また、シリコンに比べ色のバリエーションも豊富と言われています。
そのかわり、耐水性や耐久性はシリコンに劣ります。
トタン屋根の雨漏りを修理するには?
雨漏りを修理する方法も、損傷の進み具合によって色々あります。施工例の多い方法を紹介していきます。
トタン屋根の修理を自分で行う
トタン屋根の修理をDIYで行う場合の工程はおおまかに以下の通りです。
- キズやサビなどをたどり、穴あき・ひび割れなどの雨の侵入口を特定します。個人で行う場合、主に目視になります。
- 表面のサビ落とし(研磨)を行い、ごみや汚れなどをキレイに除去します。どちらも残っていると防水材の仕上りが悪くなります。また、古いコーキングがある場合、それもカッターなどを使い除去します。
- さらに防水材の定着を良くするため、プライマーを塗布します。
- 防水材で穴をふさぎます。
サビを落とし、汚れを除去した上でプライマーを塗り、乾いたらマスキングをします。
そしてマスキングの内側にコーキング材を厚めに充填します。
見た目が気になる場合はヘラで押さえ、余計なコーキングを取り除きます。最後に速やかにマスキングを剥がして終了です。
乾くまでは暖かい季節でもまる一日かかります。触らないよう注意しましょう。
コーキング以外でDIYできそうなものとして「防水テープ」があります。
サビや汚れを落とすのはコーキングの際と同様で、あとは穴・亀裂部分にテープを貼るだけです。
手軽で施工しやすいですが、コーキングよりは耐久性・防水性は落ちる場合が多いです。
DIYによる雨漏り補修を応急処置と割り切るのであれば、むしろ防水テープによる補修の方が施工が簡単な分、良いかもしれません。
これらの作業を行うにあたって必要なものとしては、
- スクレーパー(ケレンベラ)やカッター
- サンドペーパーやタワシ
- 雑巾やウエス
- プライマー(下塗り材)
- マスキングテープ
- コーキング材(シリコン・変性シリコン等)、必要に応じてコーキング用のヘラ
- 防水テープ(できればブチル状など粘着性の高いもの)
などです。これらはいずれもホームセンターやネットで購入できます。
逆に言うと、DIYで対処できるのはこういった入手できる工具・材料でできる修理に限定されるということです。
また、他にも屋根に上るための脚立やはしごも必要となるでしょう。
当然ながら、屋根に上るということイコール高い所での作業になります。勾配があるうえ、老朽化したトタンは滑りやすく、転倒や転落の可能性がある大変危険な作業であることを理解しておきましょう。
トタン屋根の修理を業者に依頼する
一方、業者に依頼する場合は以下のような工程・選択肢があります。
目視:目視でひび割れや穴・破損を確認します。
散水調査:雨に見立てて実際に水をかけ、雨漏り箇所を確認します。
赤外線サーモグラフィー調査:屋根に赤外線を当てる方法です。色が異なって見える部分が破損箇所となります。
発光液調査:屋外(屋根)から発光液をかけたうえで室内から紫外線を当てる方法です。液が入り込んでいる箇所(雨漏り箇所)は光って見えます。
部分補修:DIYと同様のコーキング処理の他、部分だけの屋根材貼り替えなども行えます。応急処置的な意味合いが強い方法です。
補修+塗装:穴埋め処理を行ったうえで、トタン屋根に塗装を行います。剥がれやサビが広範囲の場合はこちらが良いでしょう。ただし、トタンのダメージが大きい場合は不向きです。
カバー工法:今あるトタン屋根の上に重ねて新しい屋根材を貼る方法です。なお、トタンより耐久性が高い「ガルバリウム鋼板」で施工するのが主流になっています。
葺き替え:現在の屋根材をはがし、新しい屋根材(主にガルバリウム鋼板製)を貼りなおす方法です。屋根や下地材の損傷が激しい場合はこの方法になり、下地材の補修・交換なども一緒に行います。
このように、補修の方法も多数あるのですが、どれが適切か、もしくはここで紹介した以外の最適な補修方法があるかなどは、正直判断が難しいです。
経験が豊富な施工業者に調査してもらってから一緒に検討するのがベターでしょう。
トタン屋根が雨漏りしている原因は?
要因が多いトタン屋根の雨漏り原因ですが、おおまかに分類すると以下のようなものが多いです。
棟板金が剥がれている
屋根材と屋根材の接続部分(屋根の一番高い部分)に被せる板金を「棟板金」と呼びます。
雨水の侵入を防いでいる最重要パーツでもある棟板金ですが、雨風にさらされやすいため、ひときわ傷みやすい部分でもあります。
強風によってめくれたり剥がれたりしてしまうと、ジョイント部が露出してしまい、そこから雨水が侵入します。
サビが発生している
サビの発生はトタン屋根の雨漏り要因の筆頭です。経年劣化や雨風による破損で、塗膜や亜鉛メッキがはがれると、鋼板はあっという間にサビはじめます。
そのまま放置して腐食が進むと穴が開き、雨水の侵入を許してしまいます。
外壁や結露など屋根以外
実はトタン屋根には痛みが無く、全く別な要因から雨漏りしているということも、意外に多いのです。
空気が冷やされることで空気中の水蒸気が水になってしまう結露ですが、室内外の温度差が激しい季節に起こりやすいです。
気密性の高い新しい建物で換気が足りていない(「24時間換気」指定の換気扇を切ってしまっている)場合などにも発生しやすく、屋根に傷みが無いのに天井に水滴やカビが発生しているときは、結露の可能性を考えましょう。
結露は換気を改善することで解消・軽減されます。
外壁に面した壁や天井付近から雨漏りしている場合、外装仕上げ材の亀裂やコーキングの劣化など、外壁面の損傷が原因の可能性が高くなります。
特に、最上階でない箇所(2階建て建物の1階など)で雨漏りが発生している場合などは、こちらを疑ってみましょう。
トタン屋根の雨漏り修理は業者に依頼した方がいい?
ここまでの内容をまとめてみると、トタン屋根の雨漏りを自分で補修するには数々の難点があることがわかるでしょう。
他にも、自分の判断で手当たり次第にスキマをふさぐと、本来の雨の流れをさまたげて、雨漏りが悪化する可能性があるといったことも考えられます。
これらのようなリスクを考えると、結論としては「最小限の応急処置を行い、すかさず施工業者に修繕工事の相談をする」のが良いと思います。
損傷の箇所・規模によって、防水工の領域だったり、板金工の領域だったりしますので、最適な修繕内容を見極めて、必要な業者に手配できる工務店に依頼するのがベストでしょう。
「トタン屋根 雨漏り コーキング」を検索する人がよく思う質問4選
まとめ:コーキング補修は難しいので業者依頼も検討しよう
屋根は建物の機能を維持するうえで、もっとも大切な部分です。屋根の損傷を放置したり、不適切な対処を行うと、雨水が構造体に侵入し、建物の寿命に大きく影響が出るのです。
そんな屋根の補修を自分でコーキングして対処するというのは、安全面も含めて少々荷が重いように思われます。
業者に依頼すると費用はかさみますが、早めにしっかりとした修繕を行えば建物の寿命を延ばすことができます。長い目で見たときに、莫大な出費になることを防げるはずです。
ちなみに、コーキングを施す必要となるトタンの穴が発生するまで放置せず、前兆であるサビが進行する前に塗装を行うなど、メンテナンスを念頭に入れておくことで、建物の劣化や修繕費用を抑えることができますよ。