シーリング(コーキング)工事を行う場合に出てくるワードとして「ボンドブレーカー」や「バックアップ材」などがあります。
どちらもコーキングには欠かせない重要な材料ですが、正確な役割や使用法がわからないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、ボンドブレーカーやバックアップ材がどのように使用され、どういった違いがあるのかを中心に紹介していきたいと思います。
ボンドブレーカーとバックアップ材の違いは?
ボンドブレーカー
ボンドブレーカーは薄いテープ状になっており、浅い目地にコーキングを行う場合に使用します。
幅は10mm・12mmなどで、主にサイディングの目地材「ハットジョイナー」に貼って使用します(あらかじめボンドブレーカーが貼り付け済みのものもあります)。
バックアップ材
ロール状に箱詰めされている丸型と1メートルほどの長さの角型があります。
角型には接着剤が付いており、シールやテープのように貼付けられます。
幅は3~10mm、厚さは2~20mm程度の幅広いラインナップがあります。
目地が深い場合、適切な厚みのバックアップ材でコーキングの深さを調整します。
シーリング材の基本
シーリング材の目的
シーリング(コーキング)の目的は「防水」です。
隙間を埋めるということに広く利用されるシーリングですが、本来の目的は、建物の外装の目地から雨水や結露などの水分を内部に侵入することを防ぎ、建物を守ることにあります。
シーリングはゴムのような柔軟性を持ち、少なからず伸縮する建物の各所に存在する目地・隙間を埋めることに適しています。
シーリング材の種類
一般的に広く使用されているシーリング材の種類としては以下のものがあります。
ポリウレタン製
汎用性の高いスタンダードなシーリング材です。
ポリウレタンの特性として、引張強度と耐摩耗性に優れており、ポリウレタン製のシーリング材は外装材同士の目地や隙間、外装材と開口枠の取り合い部などに使用されます。
ただし、耐候性に関しては後述する変成シリコンに劣りますので、外部での使用には塗装を前提とした方が良さそうです。
シリコン製
ホームセンターなどでの取り扱いも多い汎用品であるシリコン系シーリング。
撥水性が高く耐久年数も長いので、浴室や台所などの水廻りに使用されることが多いです。
ただし、塗料が定着しない(色が乗らない)という弱点があり、外装で使用する場合は注意が必要です。
変成シリコン製
ポリウレタンの改良型とも言える変成シリコン製シーリング材は、紫外線に対する耐候性もあり屋外で使用するのに適しています。上から塗装も可能です。
シーリングの構造
外壁のシーリング目地の構造について説明します。
まず、サイディングの厚みが12~18mm程度、幅が10~15mm程度です。
それに対し、適切な目地の深さが8~10mm程度なので、目地部分には凸型の部材「ハットジョイナー」が入ります。
目地にシーリングを打つのですが、ハットジョイナーにシーリングが付くと「3面接着」の状態になります。
その状態がシーリングの柔軟性を妨げ、結果として防水上好ましくない為、ハットジョイナーにボンドブレーカーが貼られます。
ボンドブレーカーが貼られた面にはシーリングが接着されないため、シーリングの柔軟性が保たれる「2面接着」の状態になるのです。
なお、目地深さが10mmを超えてしまう形状の場合にはボンドブレーカーの代わりにバックアップ材を充填します。
コーキングの2面接着と3面接着使い分け
2面接着
シーリング材が2面に接着する方法です。
窓枠・ドア枠などの狭い目地に適しています。
また、前述のとおり外装材の目地も2面接着である必要があります。
2面接着の利点は柔軟性です。動きや膨張、伸縮に対応できなければならない箇所は2面接着でないと割れ・隙間が発生しやすくなってしまいます。
3面接着
シーリング材が3面に接着する工法が3面接着です。
柔軟性よりも強固な固定を求められる箇所に適しています。
コーキングが多くの面に触れることにより、固定が強くなるという考え方です。
動きが少ない部分で効果を発揮します。
強度や柔軟性という観点から考えるとなかなか紛らわしいのですが、動きが大きい箇所は2面接着、小さい箇所は3面接着と考えておけば概ね間違いないかと思います。
シーリング工事の3面接着ALCとは?
セメントぺーストに発泡剤を加えて製造された「軽量気泡コンクリート」をALCと言います。
ALCを含めたRC(鉄筋コンクリート)造の打ち継ぎ目地・誘発目地などは、部材の温度差による伸縮や揺れがほとんど発生しないため、その接合部には3面接着のシーリングが適しているのです。
このように、外壁の目地でも外装材の材質によって適するシーリングの接着方法が違ってくるので注意しましょう。
バックアップ材とは
バックアップ材の特徴
バックアップ材の材質はポリエチレン発砲体です。
軽量で柔軟性・復元力に長けており、弾力性や薬品への耐性も持ち合わせています。
また、ボンドブレーカー同様、シーリング材が接着されないという重要な特徴があります。
これによりシーリング材の非接着状態をつくることができ、2面接着とすることができます。
これによって、シーリング材は伸縮に対して柔軟に対応できるようになります。
結果、密閉性を長く維持できるようになるのです。
深すぎる目地にはボンドブレーカーでは対応が難しいため、バックアップ材が重宝されるでしょう。
なお欠点として、ポリエチレンは可燃性であることが挙げられます。
使用する際には火気に近づけないよう注意を図りましょう。
バックアップ材の使い方
施工箇所の清掃
既存のコーキングをきれいに取り除きます。
カッターで切り目を入れ、ラジオペンチなどでつまんで剥がし取ります。
残ったバックアップ材も同様に取り除きます。
残りカスやホコリなども刷毛などを使って除去しましょう(新たに装填するバックアップ材の収まり・接着に影響します)。
バックアップ材の装填
ねじれや段差が発生しない様に、丁寧にバックアップ材の装填を行います。
目地の太さに合わせてバックアップ材の径(幅)を選定します。
目地幅より少し太い材をヘラ等で押し込んでいきます。
目地に対してバックアップ材が細すぎると、コーキングを打つまでに浮いたり抜けたりする恐れがありますし、逆に細すぎると目地に入りきらず、必要な奥行きが取れない可能性があります。
マスキング
目地の際にピッタリ合うようにマスキングテープを貼っていきます。
外装材の凹凸に貼りつくように丁寧に貼りましょう。
サッシ回り等、傷が気になる箇所は、バックアップ材を入れる前にマスキングするのも手です。
プライマー
外装材やサッシなどに対し、プライマーを塗ります。
これを行わないとコーキングがしっかり定着しません。
コーキング材充填
中に空洞ができないよう、少しはみでるくらい多めに注入します。
ヘラでならす
押さえ込むような感じでコーキングをヘラでならしていきます。
飛び出したコーキングをしっかり取り除きます。
マスキング撤去
コーキング材が乾燥をはじめる前に、マスキングテープを速やかに剥がします。
コーキングでバックアップ材の代用できるものは?
バックアップ材の一番の目的は「コーキングが接着されないこと」です。
なので、バックアップ材と同質のものであれば理論上代用できます。
ポリエチレン発泡体、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレンなどがバックアップ材の主な材質です。
ただし、適切な深さを確保することも意識しなければならないでしょう。
ちなみに、ボンドブレーカーの代用品としてマスキングテープが挙げられます。ただし、接着力や耐候性能などでは劣りますし、コーキング材とテープの材質の相性によっては使用できない組み合わせもあります。
ボンドブレーカーの仕組みについて
ボンドブレーカーの素材はポリエチレンでシーリングへの接着性が無いため、シーリングを2面接着とすることが可能になります。
2面接着にすることでシーリング材の伸縮性を発揮でき、シーリングにかかる負担を軽減させられるので、結果シーリングの寿命を延ばすことにもなります。
また、厚みが0.1~0.2mm程度なので、バックアップ材を入れられない浅い目地に使用することに適しています。
コーキング三面接着の撤去方法
2面接着のコーキングを撤去する場合は境界部分をカッターで切ることで比較的簡単に取れるのですが、3面接着の場合は背面部の接着を取るのに苦労する事でしょう。
ネット上でも適した工具を模索している意見が見受けられます。
その中からいくつか取り上げてみると、
- ビートナイフ(彫刻刀の一種)
- ペンカッター
- マイナスドライバー
などが挙げられています。
また、コーキングを取る専門の工具も販売されています。
こういった工具を利用してハンマーで叩く・地道に擦り取るなどをして撤去することになります。
いずれにしても2面接着の撤去に比べて圧倒的に時間がかかります。
シーリング材のメンテナンスと施工方法
シーリングは建物の寿命にも強く影響する重要な部分なので、定期的なチェックを行い、効果を長持ちさせたいものです。
シーリング施工から年数が経つほど点検の頻度を高めた方が良い他、気象・環境などが過酷な地域でもマメなチェックが必要となるでしょう。
シーリングの状態をチェックする方法として、以下のようなものがあります。
目視:シーリング箇所に亀裂・剥がれ・変色等が無いかを確認できます。最も手軽かつ基本的なチェック方法です。
質感(手触り):指で軽く押してみて、弾力性があるかを確認します。硬すぎる・柔らかすぎる場合はシーリングとしての機能が衰えている可能性が高いです。
水分:シーリングは防水のためのものです。シーリング部分に水をかけてみて、浸透・滲みが発生しているようであれば、劣化を起こしている可能性が高いです。
これらのチェックを日ごろから気に掛けシーリングの劣化・トラブルを早期発見し、速やかに対策を検討することが、建物の寿命を延ばすことにつながります。
また、自分では見落としてしまうシーリングのトラブルも考えられます。
専門業者などによる定期的な点検を依頼できれば、一層安心と言えるでしょう。
「ボンドブレーカー バックアップ材 違い」を検索する人がよく思う質問4選
まとめ:用途に合わせて使い分けを!
ここまで、ボンドブレーカーとバックアップ材の違いやシーリング(コーキング)との関係性、施工方法について紹介してきました。
ボンドブレーカーとバックアップ材の使用目的はいずれも「目地のシーリングの2面接着」です。
そして、シーリングの適正深さに合わせるために使い分けます。
目地が深すぎる場合はバックアップ材、そのままでも適正な深さ(浅い)場合にはボンドブレーカーという様に使い分けて目地底に仕込みましょう。
適切に使用することでシーリングの柔軟性や寿命を確保できます。
もし工事に立ち会うことがあるのであれば、適切な材料を選ばれているか注意して見てみると良いでしょう。