いつの間にか出来ている外壁のひび割れ。
古い建物に限らず、新築から数年で発生するものもありますが、そのまま放置しておくのが不安と思われる方も多いでしょう。
実際、外壁のひび割れには様々なリスクがあります。
ここでは、外壁のひび割れの原因やひびの発生に対しての保証についてなどを詳しく解説していきます。
外壁のひび割れに保証はある?
新築の際や外壁の改修・塗装工事などを行った際にも、それぞれの業者ごとの保証内容がある場合があります。
まずは契約書や引渡し時の重要事項説明の書類などを確認してみましょう。
ひび割れは対象外の場合が多い
残念ながら「ひび割れ」に対しては保証の対象外である場合が多いです。
一般的に、外壁の施工に関しては塗料のメーカーや施工業者などの保証がつくのですが、塗料メーカーの保証というのは塗料製品自体の品質に対してのものです。
「外壁」に発生するひび割れの保証にはなり得ないのです。
一方、施工業者の保証というのは、「施工不良」という、業者の施工に問題があった場合に対しての保証です。
塗膜(塗装面)の剥がれや膨れ、塗りムラなどが対象であることが多く、ひび割れは経年劣化と判断され保証の対象外となることが多いです。
ひび割れで保証してもらえる場合
先に説明した通り、ひび割れは経年劣化扱いになることが多いのですが、塗装工事を行って1年未満でひび割れが起きた場合などは、状況的に「経年劣化」とは言えず、塗装業者の責任という可能性も高いです。
そういったケースであれば保証(どちらかというとクレーム対応)として修繕してもらえる可能性があるので、施工業者に申請・交渉しましょう。
外壁のひび割れ保証期間
上記のように、早期のひび割れであれば保証の対象になることはあっても、5年・10年と経ってしまったら「経年」と判断される可能性は高くなります。
竣工(施工完了)時に貰った保証書に目を通し、保証期間や保証条件をしっかり確認しましょう。
外壁のひび割れ保証のポイント
保証の範囲
外壁のひび割れが保証の対象になる条件としては、「塗装工事」の「施工ミス」にあたるものです。
その条件下では他にも塗りムラや剥がれ・膨れ、そして色落ちなども保証の対象に該当します。
また、保証とは違いますが、外壁塗装前には下地補修としてひび割れや凹凸を補修するのが本来の工程なので、それが行われていなければ指摘できます。
ただし、建築に精通していない人が塗装後にそれを確認することは難しく、下地補修の工程を直に確認することが必要です。
免責事項
施工業者が責任を負わないことをあらかじめ決めている事項のことを、免責事項と言います。
それぞれの工事業者によってその内容は異なるので、重要事項説明書を確認しましょう。
免責事項の一般的な例としては以下のようなものになります。
- 家主が使用しているときの破損
- 事故による破損
- 維持管理に問題があった場合の破損
- 経年劣化による摩耗・消耗
- 自然災害・火災・公害が原因の破損
- 施工を行った際に発見できず、その後建物・壁に不具合が起きた場合
申請時期
塗装業者を例とすると、一般的に数年~10年程度の保証期間を設けています。
塗料の種類や施工方法によってそれぞれの保証期間が設定されている場合が多いようです。
保証は経年劣化を対象外としているので、施工不良が見つかった場合は速やかに業者に申請しましょう。
長く放置しておくと、経年劣化と判断されて保証対象外にされる可能性が高くなります。
瑕疵保証
「瑕疵」とは、法律上の欠陥や欠点を指す言葉です。
施工前に渡される工事請負契約書や施工後に業者から受け取る保証書の中に、瑕疵について保証される明記がされているかを確認しましょう。
明記が無い場合や説明を省く、質問内容に対して説明を面倒がるなどの業者は信頼性的に要注意です。
工期や施工費用はもちろん大事ですが、アフターフォローをしっかりとしてくれる業者を選択しましょう。
外壁のひび割れに対応した保険はある?
住宅に対してかける保険として一般的なのは火災保険です。
この火災保険、単純に火災に対しての保証だけを行うものではありません。
保険の証書やカタログなどを確認していくと自然災害をはじめとした多岐にわたる補償内容が存在します。
外壁に関して言うと、「台風・突風などによる飛散物で傷がついた」といったものも火災保険の適用範囲になるのです。
外壁のひび割れが火災保険の補償対象になる事例には、以下のようなものがあります。
いずれも、過去3年以内の事例であれば補償の対象です。
- 台風や強風によって飛散物が当たった
- 不意の事故で建物(壁)に衝撃が加わった
- 雹(ひょう)が降り、壁に傷がついた
保険のプランによって更に手厚い補償が有り、「大きい(重い)物の運搬時に外壁にぶつけた」「車を停める際に外壁を傷つけた」なども対象になる場合もあります。
外壁のひび割れが発生した理由が上記ようなものであった場合は、補修の依頼をする前に保険会社に相談・申請しましょう。
築3年の外壁ひび割れは保証されるのか?
大切な新居がわずか3年で外壁にひびが入ってしまうのは、施主としては不満や不安もあると思います。
外壁のサイディングのジョイント部やコーキングの劣化などでひび割れが目立ってくるのは、一般的には10年前後と言われています。
3年でひびが目立つ状態にあるのは立地(地盤)に問題があったり、何らかの施工不良も考えられます。
しかし新築に対してのアフターサービスは長くて2年というケースがほとんどで、築3年時での外壁のひび割れは保証されない可能性が高いです。
ただし、ひび割れが原因で雨漏りが発生している場合は、雨漏り事象が発生した場合に施工者や設計者の責任を負うことを法的に義務化している「雨漏り事象に対する瑕疵担保履行法」が適用されます。
サイディングの保証について
新築のサイディングがひび割れした場合は保証されるのか?
大手窯業系サイディングメーカーでは、サイディングの亀裂(ひび割れ)に対しての補償を2年と定めています。
施工業者がサイディングに対して設けている保証期間も2年となっている場合が多いです。
サイディングのひび割れは火災保険で対応可能?
サイディングのひび割れが火災保険で対応してもらえるかは、「どういった経緯でひび割れたか」によります。
火災保険で対応可能な内容は自然災害に起因するものや不慮の事故などであり、施工不良や経年劣化で発生した箇所に関しては適用の対象外です。
サイディングに保証期間はある?
サイディングの製品自体には各メーカーで定められた保証が存在します。
サイディングの材質(窯業系・金属系)によって保証される内容が違い、不良内容によってそれぞれ保証期間が異なります。
契約・引渡し時の書面で、どういった補償内容になっているか確認が必要でしょう。
そもそも外壁のひび割れとは?
外壁のひび割れ種類
外壁のひび割れは大きく2つの種類に分類されます。
- ヘアークラック : 塗料の塗膜などに入る細いひび。主に幅0.3mm以下・深さ0.4mm以下のものを指す。
- 構造クラック : 外壁本体に発生し、内部まで割れが進んでいるひび。幅が0.3mm以上のものは構造クラックの可能性が高い。
ヘアークラックは緊急性の無いひびではありますが、長期間放置することで構造クラックにもなりうるので、定期的にチェック、補修を検討すると良いでしょう。
外壁のひび割れ原因
ひび割れといっても塗膜に発生するものや、外壁本体に発生するものなど様々です。
経年によるものや地震などの災害による外的要因、施工不備など、発生原因は下記の様にいくつも存在します。
・強風・台風により物が当たった
・雹が降って傷がついた
・不意の事故で衝撃が加わった
・経年劣化によるもの
・施工不良によるもの
・ペットが傷をつけた
外壁のひび割れで何が起こるのか
外壁のひび割れからつながる被害には以下のようなものがあります。
雨漏り
外壁の大事な役割の一つに「雨水をしのぐ」ということがあります。
外壁に深いひび割れがあると、そこから構造部に雨水が侵入して水を含んだ状態が生まれます。
その状況が長く続くと、やがて室内に雨漏りが発生してくる恐れがあります。
構造部の劣化
外壁から水分が侵入することは、柱や土台、梁などの大切な構造材を濡らすことになります。
住宅の構造材は木材であることが多いですが、水に濡れ続けたり湿気が多いと腐食が進みます。
それによって建物の耐久性は大幅に損なわれ、地震などの災害時に耐えれない可能性もあります。
鉄筋コンクリート造の場合も、コンクリートがひび割れて鉄筋が露出すると、建物に深刻なダメージです。
鉄筋の露出はサビに直結し、膨張によって内側からコンクリートを破壊することもあり得ます。
白アリやカビが発生する
建築物の大敵である白アリは湿気を好みます。
構造部に浸透した雨水により、白アリ発生のリスクが高まります。
湿気から発生するものにカビの存在もあり、繁殖したまま生活していると、感染症・アレルギー・中毒などに繋がるカビ菌を体内に取り込むリスクが生じます。
外壁ひび割れの補修方法
ひび割れの大きさや深さによっても補修方法は違いますが、事例が多い補修方法として「コーキング」をひびの箇所に刷り込むという方法です。
コーキング材には収縮性や耐候性が有るため、ひび割れの補修に適した材料でしょう。
- ひび割れ部と周辺をキレイに清掃する
- コーキング用のシーラーをひびに塗布
- ひびにコーキングを打ち、ヘラで押し込むように押さえる
このような工程を行い、コーキングが完全に乾いたら塗装など仕上げを行います。
その際、広く販売されている「シリコンコーキング」を使用すると塗装が出来なくなるので注意しましょう。「変成シリコン」「ウレタン」などのコーキング材を使用すると良いでしょう。
外壁ひび割れの補修費用
外壁のひび割れを補修するのにかかる費用は1ヶ所につき1~15万円程度と言われています。
劣化が進み過ぎて「補修」で済まない場合には30万円ほどかかったという例もあります。
大きな天災に見舞われた場合やひび割れを長年放置した場合など、外装材(サイディング)の貼り替えにまで及ぶと大きな出費になるでしょう。
2階建て住宅などの高所の補修となった場合、足場掛けの費用もかかり、最低でも10万円程度と考えておきましょう。
外壁のひび割れ補修は自分でできる?
軽度なひび割れ(0.3mm幅以下のヘアークラックなど)の場合で、足場を掛ける必要のない箇所の補修は、自分でできる可能性もあります。
前述したコーキングの他に、ひびに塗り込むだけの「セメントチョーク」や、ひびにスプレー缶に入ったセメントを吹き付けられる「スプレーセメント」など、手軽な補修材を使用するのも良いでしょう。
外観が気になるなど、目立つ部分は業者に依頼した方が良いかもしれません。
土間コンクリートのひび割れは保証してもらえる?
土間コンクリートへのクラック(ひび割れ)は施工品質に関わらず発生することがあり、新築時の重要事項説明書にも、土間コンクリートに対しての保証はされていない(補修免責となる)ケースがほとんどです。
「保証」という形でひび割れを補修してもらうことは難しいでしょう。
結局、どの程度補修対応してくれるかは施工・購入した工務店・ハウスメーカーの方針によるところが大きいです。
新築1年未満で目立ったひび割れが発生した場合は相談をしてみる価値はあると思います。
ひび割れの補修を依頼する業者の選び方
ハウスメーカーや工務店に依頼した場合、自社施工の業者に直接依頼するのに比べ、中間マージンの分費用が高くつく可能性があります。
その一方で、塗装・サイディング・下地補修などトータルに発注や管理をしてもらえる強みもあります。
塗装・外装工事業者などの自社施工業者やハウスメーカー・工務店・リフォーム専門業者など、広い業種に見積もりを依頼する「相見積もり」をおすすめします。
相見積もりをすることで、金額の相場や施工内容の良し悪しもわかるので、不当に高額な費用を取られたり、手抜き工事になるのを防げる可能性が高くなります。
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まとめ:まずはプロの業者に相談してみよう!
ここまで、外壁のひび割れについて紹介してきました。
大前提として、建物の構造上ひびが全く入らないということはあり得ません。だからと言って、ひび割れを長く放置しておくと建物の寿命にも影響が出てくるため、定期的にチェックすると安心です。
業者に依頼すると、場合によっては大きな費用がかかりますが、建物の寿命・強度に関わる問題です。気になるひび割れを見つけたら、信頼できる業者に相談してみましょう。