サイディングは材質によって劣化状況が異なりますが、日本でサイディングボード普及占有率70%を超える窯業系サイディングボードについて、主にお話ししていきます。
サイディング自体にひび割れが入った場合には残念ながらその部分か、またはすべてが寿命が来ていますので、張り替えか重ね張り、運が良ければその部分だけ張り替えもできるかもしれません。
まずは、サイディング劣化状況を見てみましょう。
サイディング劣化状況を確認
サイディング劣化はボード自体が劣化する場合とそのつなぎ目であるコーキングが劣化する場合があり、全体の8割はコーキングの劣化です。
サイディングボードは車をぶつかるなど物理的な損傷がなければ割れることはなかなかありません。(凍害による伸縮で割れることはあるので地域差はある)
ということで、まずはコーキングの劣化についてみていきたいと思います。
コーキングの劣化
コーキングの劣化は硬化してひび割れるか、接着がはがれるかのいずれかです。
この劣化したコーキングの画像は全ての条件が入っていて、全体的に硬くなっている状況が見て取れますね。
さらに、上のほうでは割れが起こっていて、下のほうでは剥離が起こっていることが確認できます。
こうなると間から雨水などが入りサイディングボードを劣化させるのです。
サイディングボードの劣化
サイディングボード自体の劣化はコーキング劣化で雨水にさらされることと、塗装の塗膜がなくなって水を吸収してしまった場合に劣化してしまいます。
なお、サイディングボード別に劣化状況を分かりやすいように表にしています。
画像 | 劣化状況 | |
窯業系サイディング | 窯業系サイディングは防水能力がなく、塗装の塗膜がなくなることで水分を吸収しやすくなる。その結果、表面の色あせ、かびや藻、変色に凍害などによる割れが発生する。塗膜がなくなるサインはチョーキング現象が確認できるので分かりやすい。 | |
金属系サイディング | 金属系サイディングはさびに弱いので、コーキングや塗膜が劣化することで腐食が進んでしまう。一度発生した腐食を止めることは難しく、サイディングボードの張り替えが必要になることも多い。 | |
木質系サイディング | 木質系サイディングは木であるために腐食に弱いため、コーキングや塗膜が劣化すると腐ってしまう。また外観上の問題として意図しない変色が起こる場合があるため、他の材質よりもメンテナンスを定期的に行う必要がある。 | |
樹脂系サイディング | 樹脂系サイディングは超耐久の材質だが、紫外線による変色には弱い。そのため、メンテナンスフリーのように言われるが紫外線対策のために超耐久塗料で外壁を塗装しておく。 |
サイディングボード自体に反りが発生して、その結果ボードにひび割れなどが発生してしまうという状況になるのです。
この画像のケースではさらに反りが大きくなればひび割れなどを起こす可能性が上がります。
こうなるとサイディングボードを張り替えることでしか根本的な修理はできません。
塗膜の劣化については、外壁の材質にも左右されますが、家の外壁を触ってみて粉が付くかどうか、チョーキング現象の有無で確認するようにしてください。
次にサイディングボードの補修方法と費用について話していきます。
サイディング補修費用の比較表
サイディング張り替えの費用を「塗り替え」「重ね張り」とあわせて比較します。
また、重ね張りはカバー工法と表現を変えることがあります。
張り替え | 塗り替え | 重ね張り | |
費用目安 | 200万円から300万円 | 60万円から200万円 | 150万円から280万円 |
工期 | 2週間ほど | 1週間から2週間 | 1週間から2週間 |
サイディングの張り替えが一番費用が高く付くのは、現在の外壁をはがしてからまた付けるからで、塗り替えが基本的には安く済む方法です。
カバー工法についてはその中間ぐらいですが、外壁を重ねて張ることでメリットもある反面、デメリットもあります。
それぞれの方法についてメリットとデメリットを見ていきます。
サイディング塗り替え費用
サイディングの補修で代表的なものは塗り替えで、費用としては塗料や家の大きさなどによって変わってきて、60万円から200万円ほどです。
塗料によって耐用年数が異なり、一番耐用年数が短いアクリル塗料で5年前後、一番耐用年数が長いフッ素塗料で15年超です。
ただし、塗料の耐用年数も大切ですが、実際にはコーキングの耐用年数に合わせることが望ましく、またサイディングの寿命に合わせるという考え方も重要です。
つまり、耐用年数が長い塗料を選択することは悪いことではありませんが、コーキングのことも考えるとその劣化状況に合わせるほうが望ましいと言えます。
塗り替えのメリット・デメリット
サイディング塗り替えのメリットは費用の点で他の方法よりも優れています。
当然、既存のサイディングボードに対して作業していくので工期も他の工法より比較的短くなることが予想されます。
反面、サイディング塗り替えのデメリットについては、サイディングボードの劣化が激しい場合にはこの方法で補修できないことです。
特に窯業系サイディングボードは外壁塗装の塗膜がなくなった場合に水分に弱くなり、「反り」「浮き」「割れ」といった症状が出てきます。
こういった場合には塗り替えではどうにもならないことが多く、張り替えを行う必要があります。
つまりはサイディングボードが取り返しのつかないほど劣化する前に塗り替えをする必要があるのです。
ただし、モルタル壁と異なり劣化する状況が分かりやすいので、手遅れになるほど劣化が進むのは意図的にメンテナンスを先送りする場合ぐらいでしょう。
サイディング張り替え費用
サイディング張り替えはサイディングの寿命が来たときと、塗り替えや重ね張りでどうにもならないような状況で選択する修理方法ですが、費用も当然高く200万円から300万円ほどします。
サイディングの寿命ならばまだしも、劣化によって張り替えをしなければいけない状況になってしまうことは避けたいところです。
塗り替えでも話したことですが、サイディング寿命と塗り替え塗料、またコーキングの寿命を合わせることが、全体の支出を最小化するコツであり、そのうえで張り替えをするために長期計画を立てて家の修繕をするようにしてくださいね。
張り替えのメリット・デメリット
サイディング張り替えのメリットは何といってもサイディングボードの問題を根本的に解決できることです。
というのも、例えば雨漏りをしていたとしてもカバー工法では雨漏りを止めることはできますが、内側の壁に対しての問題を解決しているわけではありませんからね。
また、外観も大きく変えることが出来ることはメリットの一つです。
サイディング張り替えのデメリットについてはどうしても費用が高くなることです。
また建材ゴミが出ますので環境負荷も大きいものになっています。
とはいえ、サイディングボードの寿命については樹脂系を除けば30年前後が一般的ですから、いつかは張り替えを行う必要があります。
重ね張り(カバー工法)費用
サイディングの重ね張り(カバー工法)はサイディングの寿命が来たときと、塗り替えでどうにもならない劣化があるときに選択する補修方法で、費用は200万円から280万円ほどです。
サイディングの張り替えよりも若干安いとはいえ、それなりの支出であることは塗り替え費用と比べると分かることです。
塗り替え同様に重ね張りも根本的な劣化を解決する方法にはならないことには注意する必要があります。
つまり、内側の壁に問題があったとしてもそれを解決する方法ではありませんから、都合よく重ね張りで問題が解決すればよいですが、そうでなければ結局意味がないことになります。
なお、重ね張りの場合にはサイディングボードの重量が重い場合に家のバランスが崩れるので、軽量な金属系サイディングか樹脂系サイディングが選ばれることが多いです。
重ね張りのメリット・デメリット
サイディング補修を重ね張りで行うメリットは建材ゴミが出ないことや、本来張り替えを行うべきところをカバー工法で解決することで考えると、工事期間も短くなりますし、費用は若干安くなることです。
また、外壁が二重になることで空気の層ができ、断熱・防音の効果向上が期待できます。
反面、サイディングボードをカバー工法で行うデメリットは、外壁に起こっている状況を根本的に解決したことにならないという点です。
つまり、雨漏りやサイディングボードの劣化などについてはそのまま残りますので、このことで発生している問題をカバー工法で解決しない場合には、結局意味がないことになります。
また、外壁材を多く付けることによって家の重量が増しますので、地震などの際にバランスによっては大きく揺れる可能性があります。
このことで、カバー工法で利用されるサイディングボードは金属系のものが多いです。
その理由としては窯業系のサイディングボードは重く、重量比較で金属系のサイディングボードは1/3の重量になるからです。
もう一つ上げるとしたら工事費用が、張り替えよりも安いとはいえ、塗り替えよりも高い状況である点です。
コーキングだけの補修費用
コーキングだけを補修する場合には20万円から40万円が補修費用の目安になります。
サイディングボード劣化といえば、メインはコーキングの劣化ということでしたが、コーキングの劣化は5年から10年とそれなりに短いです。
そのため、サイディングボードの塗膜がまだ問題ない場合にはコーキングだけ補修する必要があります。
そこで考えなければいけないのは足場代で、塗り替え塗装をする場合には足場を同時に使うことができますが、コーキングだけの補修をする場合では2度以上も足場代がかかることになります。
つまり、最近は塗り替え塗料の耐用年数も長くなってきていますが、その塗膜が切れる前にコーキングだけ補修するということもある、ということを忘れないようにしてください。
コーキングの打ち直しは必要なのか?
サイディングボードのメンテナンスとして重要なのはコーキングの打ち直しです。
コーキングとは、サイディングボード間をつなぐゴム質のもので、これがサイディングボード間の隙間を埋め、雨などの侵入を防いでいるのです。
コーキング部分の劣化としては長くても10年ですので、塗り替えや張り替え、カバー工法の際に、コーキング部分の補修も行います。
とはいっても、打ち直しということであれば塗り替えの時であり、張り替えでは当たり前にメンテナンスしますし、カバー工法の場合にも打ち直しというわけではありませんが、旧外壁全体に対して新外壁で覆うことを考えると、塗り替え時に気にすることであるという認識で問題ありません。
なお、コーキング打ち直しの費用は20万円から40万円ほどを目安にしてください。
結局どの方法が得なのか
サイディングボードのメンテナンスとしては、基本的に適時に塗り替えをすることが大切です。
ただし、サイディングの寿命が樹脂系を除けば30年ということで、家を買って1度は張り替えやカバー工法を施工する必要があるでしょう。
つまり、塗り替えによって2回から3回メンテナンスをした後には、サイディングの張り替えをしなければいけない状況になります。
また、サイディングボードの劣化が進んでしまった場合などには、当然塗り替えでは解決できなくなりますので、張り替えやカバー工法をする必要があります。
したがって、どの方法が得かといえば、その状況によってサイディングメンテナンス方法は変わってくるということになります。
サイディング補修はDIYで出来る?
サイディングの補修についてはDIYで出来なくもありませんがやめておいたほうが無難です。
まずコーキングについては、確かにホームセンターなどでシーリング材とそれをセットするガンは売っていて、それらを使えば安価なのですが、実はコーキングを埋めるのは少し技術が必要です。
まずただ間を埋めればよいという話ではなく、奥部分だけ接着しないようにボンドブレイカーというものを使って横だけの2面を接着させなければいけません。
さらに、コーキング周りは養生をさせなければ外観上望ましくない垂れが発生します。
これだけでも難しそうなのにさらにシーラーやプライマー、また古いコーキングをしっかりとらなければいけない、バックアップ剤を利用するなど、細かい作業も付いてきます。
最後に極めつけはシーリング材についても材質が4つあります。
- シリコン系シーリング材
- 編成シリコン系シーリング材
- ウレタン系シーリング材
- アクリル系シーリング材
外壁のコーキングには基本的に「編成シリコン系シーリング材」を利用します。
何より一番の理由は失敗したときに外壁材を痛めてしまうことでしょう。
その結果、張り替えや重ね張りをする羽目になり、結局修理費用が高く付くなんていうのは残念なことです。
一方、サイディングボード自体の補修も自分で出来なくはないですが普通はしません。
塗り替えにしても張り替えにしても、大工的なDIYで出来る領域を超えています。
元工務店出身など技術がある方ならまだしも、普通の人がネットの情報をもとに行うのは、失敗して家を捨ててもよい状況ならば、お試しでやってみるのも面白いぐらいの状況ぐらいなものでしょう。
したがって結論としてはサイディング補修を自分でやらないほうが無難です。
サイディングボードの掃除ぐらいなら良いですが、コーキングを傷めないように高圧洗浄機などで洗うことや、力強くこするなどをしないように気を付けましょう。
サイディングの寿命
サイディング自体にも寿命があります。
樹脂系を除くサイディングの材質では、主に30年がサイディングボードの寿命です。
樹脂系については少しだけ長く50年の寿命となっています。
ということは、塗り替えなどのメンテナンスを数回こなして30年の寿命時には張り替えや重ね張りをしなければいけないということになります。
中長期的に家のメンテナンスプランを考える必要があるのはこういった事情によるわけです。
つまり、サイディングボードの寿命以上の超耐久塗料を塗ったところで寿命を迎えてしまう場合には、あまり意味がないということになります。
海に近いなど塩害による劣化が早い場合にはさらに短くなるでしょうから、この辺りは業者に診断してもらうことが望ましいと言えます。
サイディング張り替えの時期
ここまでサイディングの補修方法についてみてきましたが、張り替えの時期についても考える必要があります。
サイディングボードは材質によって主に次の4つがあります。
見た目 | 特徴 | |
窯業系サイディング | 日本で普及しているサイディングボードで種類が豊富 | |
金属系サイディング | 重量が軽いので家への重量的負担が少ない | |
木質系サイディング | 木材のため燃えやすくこのサイディングボードが使えない地区もある | |
樹脂系サイディング | 日本では普及していないが高耐用年数 |
日本の家屋で見るのはほとんどが窯業系のサイディングボードです。
また、最近は材質が良くなってきたこともあって、金属系サイディングも利用されるようになっています。
それぞれのサイディングボードは当然材質が異なることで、劣化する状況も変わってきますから、それを詳しく見ていきます。
窯業系サイディングの場合
窯業系サイディングボードの張り替え時期は30年ほどです。
窯業系サイディングボードは水分に弱く、そのこともあってしっかりと塗膜を切らさないようにメンテナンスする必要があります。
現在は塗料の発達もあって、20年ほど塗膜を維持できる画期的なものもありますが、コーキングの打ち直しなどの都合を考えると、シリコン系やラジカル系の塗膜が望ましいでしょう。
したがって、窯業系サイディングボードの塗り替えサイクルとしては10年から15年が良いということになります。
金属系サイディングの場合
金属系サイディングの張り替え時期は30年ほどです。
金属系サイディングボードは、ガルバリウムやアルミニウム、ステンレスなど、さびに強い材質がそろっていますが、とはいえやはり金属ですから錆びます。
そのため、外壁塗装の塗膜は錆防止のためにしっかりとメンテナンスしなければいけません。
ただし、窯業系サイディングボードよりも錆びに気を付ければ良いだけ、また窯業系サイディングボードよりもコーキング部分が弱くないこともあって、金属系サイディングボードは15年サイクルでの塗り替えが望ましいでしょう。
木質系サイディングの場合
木質系サイディングの張り替え時期は30年ほどです。
木質系サイディングボードで気を付けたいのは腐食で、雨風によってカビが生えたりすれば、当然湿気によって腐るなどの劣化が目立ってきます。
そのため、メンテナンスについてはほかのサイディングボードよりも注意深くしていかなければいけません。
日本では全く雨が降らないという地域はありませんから、木質系サイディングボードのメンテナンスは10年ほどでしたいところです。
樹脂系サイディングの場合
樹脂系サイディングの張り替え時期は50年ほどです。
他のサイディングボードよりも樹脂系は長い耐用年数となっていますが、さらに種類によってはコーキングが不要のものもあります。
こうなると、一度使ってしまえば相当なことがない限りはメンテナンスフリーなのですが、唯一紫外線による変色が劣化状況として挙げられます。
樹脂系サイディングボードの塗り替えについては、高耐久の塗料を使うとお得であるのはいうまでもありませんが、樹脂系の劣化に合わせたものを利用したいところです。
サイディング劣化の時期を確認する
ここまで見てきたようにサイディングは必ず劣化しますし、寿命も迎えることになります。
ここで重要なのがメンテナンスサイクルをしっかりと考えながら補修をしていくことです。
例えば足場を組んだ時に一度に補修ができるならば一度の支出で済みますが、それぞれを分けて補修した場合には、その回数分だけ費用が多く発生します。
また、サイディングボードの寿命が近いのに耐用年数が長い塗料を使うというのはもったいないですよね。
つまりは、サイディングボードとコーキング、塗膜の寿命をそれぞれうまく合わせて、劣化時期を合わせたメンテナンスプランを考えることが補修費用を小さくするコツです。
一番悪いのは補修しないで取り返しが付かないほどサイディングボードや家の基礎部分を劣化させてしまうことですが、その次には補修時期についてもよく考えるようにしてくださいね!
以上、「サイディング劣化でひび割れが!塗り替え・張り替えの補修費用」でした。
お役立ていただければ幸いです。