建築物の屋根や外壁に苔が発生しているのを見たことはありますか?
苔が生えると見た目的にも老朽化を感じてしまいますが、それ以上に心配なのは苔を放置しておくことで建物の劣化につながることです。
ここでは建物、特に屋根に発生した苔を除去する方法、そして苔の除去は自分で行えるのかなどに焦点を当てて解説していきたいと思います。
屋根の苔除去はdiyでできる?
苔の除去を自分で行いたいと考えている人は多いようです。
確かに、掃除のような感覚で苔の撤去ができるのであれば業者に依頼する予算が浮くと考えてしまうでしょう。
ですが、屋根の苔を自分で除去するのは、正直おすすめできません。
屋根に登っての作業は高所作業です。
高所作業はそれだけで転落の恐れがある上に、屋根には勾配があること、苔自体が滑りやすいこと、さらには苔除去の有効手段である高圧洗浄を行うことで水を含んだ苔の上はさらに滑りやすくなることなど、転倒転落の危険性は相当高いものになります。
専門の装備や知識・経験を持たない素人が作業するにはあまりにもリスクが大きいのです。
屋根の苔除去をdiyでできるか判断する基準
では、どういったケースであれば自分で苔を除去できるのか?おおよその条件を挙げていきます。
高所に苔があるか
苔の除去で一番危惧すべきは高所作業による転落事故です。2階部分の屋根や外壁など、手が届かない箇所の苔はdiyをあきらめた方が良いです。
逆に、脚立上から手が届き、屋根に乗ったりはしごを登ったりする必要がない(高所作業にならない)部分であればdiyで除去できる余地もあると言えるでしょう。
苔が発生している範囲
苔の発生がごく一部分であればdiyできます。
一方で発生範囲が広域になっている場合は業者に依頼しましょう。
塗膜の状態
屋根の広範囲に苔が発生している場合、建物を守る塗膜が劣化している可能性が高いです。
屋根材が水を弾かなくなっていたら、塗装業者による塗り替えを検討した方がいいかもしれません。
屋根掃除で苔除去を自分で行う場合
屋根の苔に使用する除去剤
苔専用洗剤
苔専用の洗剤が市販されています。
ホコリや汚れを取り払ってから、苔専用の洗剤をスポンジに含め、優しくこすってあげることで苔をきれいに取り除けます。
苔専用洗剤以外にも、食器用などの中性洗剤でも代用可能です。
塩素系洗剤や酢、熱湯などは外装材を傷める恐れがあるので使用は避けましょう。
苔除去剤
屋根に使用するのに便利なのが、散布式の除去剤です。
スプレー式やシャワー式などありますが、風の影響を受けにくいシャワー式が使いやすいでしょう。
また、薄めずに原液で使用できるものが使い勝手が良く便利です。
ただし、除去剤を散布する際には金属部分にかからない様注意が必要です。
雨樋などが金属製の場合は使用を避けた方が良いかもしれません。
高圧洗浄機
屋外の清掃に使われる高圧洗浄機も有効手段と言えます。
デッキブラシでこすったり洗剤・除去剤などでも落ちない汚れ(苔)も、高圧洗浄機の水圧でキレイに落とすことが可能です。
ただし、高い水圧の状態で長時間当て過ぎたりすると外壁を傷ませるリスクもあるので、加減をおこないながら使用しましょう。
屋根の苔を取る方法
少量の苔の場合、ホームセンターなどで購入できる苔専用除去剤がおすすめです。
特に、屋根の苔を取る場合はシャワー・噴射式のものを使用すると、手に届かない場所に散布しやすい=屋根を歩かずに散布できる範囲が広くなるため、より安全と言えます。
除去剤は散布後2~3日で効果が現れます。苔が多く(厚く)、まだ残っている場合は再度散布しましょう。
苔に厚みがありすぎて除去剤での対処が難しい場合は、高圧洗浄機が有効です。
除去剤同様、広範囲に使用できるうえ、薬剤を使用しないため、金属部への影響も心配要りません。
DIYで苔除去をする場合、一番有効なのが高圧洗浄と言えるでしょう。
部分的な苔の除去であればデッキブラシで擦り取るのも有効ですが、作業範囲が限られ、結果として転落の危険性もあるのであまりおすすめできません。
屋根の苔除去を業者に依頼する場合
業者に依頼した場合の費用相場
業者に依頼した場合の費用相場を見てみましょう。
工法 | 費用相場 | 平米単価 |
---|---|---|
高圧洗浄 | \20,000~30,000程度 | ¥150~300/㎡ |
バイオ洗浄 | \75,000~150,000程度 | ¥250~500/㎡ |
塗装 | ¥400,000~900,000程度 | \1,600~3,500/㎡ |
業者に依頼する方法
外壁や屋根の苔の除去作業を行うのは、主に塗装業者です。
直接依頼を受けてくれる塗装業者を探しても良いですし、お付き合いのあるハウスメーカー・工務店などがあるのであれば相談してみても良いと思います。
工務店やハウスメーカーの利点は、苔の除去に付帯する足場掛けなどの工事も一手に依頼できることです。
ただし、中間マージンがかかる分割高になる可能性はあります。
塗装業者の中には塗装や足場掛け、シーリングなど広く自社施工している所もあります。
塗装業者の紹介・比較サイトなど探してみましょう。
そして、気になった業者数社から見積もりを取る「相見積もり」をすることで、適正な価格や質の良い施工を行ってくれそうな業者を選べる可能性を高めることができます。
業者で行っている苔除去方法
高圧洗浄
家庭用より強力な業務用の高圧洗浄機を使用し、高い水圧で苔を洗い落とします。
バイオ洗浄
高圧洗浄の水圧でも落ちない汚れに対して行う工法で、苔やカビなどの生物系の汚れに強い特殊な洗浄剤で洗浄します。
塗装
屋根材が水を弾かない場合は防水性が低下しているので、苔の除去に加えて塗装をするのが理想です。ウレタン・シリコン・フッ素など、塗料にも種類があり、耐用年数の長いものほど高価になります。
屋根に苔を生やすのは良くない?
そもそも屋根に苔が発生する原因は?
胞子によって繁殖する苔は、土が無くても日の光と水分だけで根付きます。
苔が発生しやすい原因は周囲の環境や建材の種類によるところが大きいです。
苔が発生しやすい周囲環境である
森や林、加えて川が家の近くにあるなどの自然環境の要因や、日当たり・風通しが悪いなどの立地条件では、苔の胞子が飛んできやすく、定着・育ちやすくなります。
苔が発生しやすい建材である
凹凸のある屋根材や外壁材は溝に水分が溜まりやすく、苔が発生しやすくなります。
また、経年劣化で表面の防水性能が低下している建材も、水分を含みやすくなるため、苔の発生原因となります。
水を弾かなくなり、水分が浸透した感じのある建材は要注意です。
屋根のコケを放置するとどうなる?
美観を損なう
建物に苔が生えていると「古さ」を感じさせ、美観を損ねます。
住んでいる人のメンタルにも悪影響を与えるかもしれません。
健康被害への影響
苔自体は人体への悪影響はありませんが、カビを発生させる要因となり得ます。
カビは皮膚炎やアレルギー性鼻炎をはじめとした、人体への悪影響を引き起こす要因となるため、放置は避けたいところです。
建物の劣化
建材の防水性にも限度があるため、水分を含む苔をそのままにしておくと外壁材や屋根材の劣化を早める恐れがあります。
塗膜に剥がれや膨れが発生したり、金属部のサビを発生させる要因にもなり得ます。
屋根材の劣化は最終的に雨漏りにつながります。
屋根の苔は火災保険が使える?
結論から言うと、屋根に生えた苔の除去に火災保険は利用できません。
屋根に生えた苔の原因は周囲の環境・立地や屋根材の劣化によるものです。
火災保険で適用される自然災害や事故などの「損害」にはあたらないのです。
屋根に苔を生えにくくする予防策は?
苔が生えるたびに業者に除去を依頼していては出費もかさみます。
苔が生えにくくする対策を行うことで、結果として労力も費用も抑えられるでしょう。
建物周辺の風通しを改善する
苔が発生しやすいのは水分が多い・湿度が高い場所です。
建物周辺の風通しを良くすることで苔が発生しにくくなります。
庭の木の剪定や周囲の片づけ、雑草の除去などでも効果が期待できます。
こまめな掃除
少量の苔であれば、市販の除去剤やブラシなどでも比較的除去しやすいです。
業者でないと対処できなくなる、苔が盛り上がった状態になる前にこまめな清掃を行いましょう。
高機能塗料で塗り替える
外壁や屋根に使用する塗料のなかには付加価値が付いた高機能塗料も存在します。
代表的なものとして、セルフクリーニング機能がある光触媒塗料などがあります。
苔の胞子を雨で洗い流してくれるというメンテナンスフリーな塗料です。
他、苔やカビの繁殖を抑える防藻・防カビ材が入った塗料も効果的です。
苔の生えにくい屋根材へ葺き替える
新しい屋根材に葺き替えることで苔の発生・付着を軽減できます。
凹凸が少ない、汚れが付着しにくい素材を選ぶことで、苔の発生を抑止できるでしょう。
「屋根 苔 除去 diy」を検索する人がよく思う質問4選
まとめ:難しい苔除去は業者に依頼を!
ここまで、屋根をはじめとした住宅の外装に発生した苔の除去について解説してきました。
ブラシなどで落とすこともでき、専用の洗剤や除去剤も市販されているので、自分で手軽に落とせるケースも多いですが、屋根に発生している場合は、除去作業も高所作業になるので、危険度は高いと言えます。
特に、厚みがある・広範囲に生えているなどの場合は、無理をせず業者に依頼することをおすすめします。
まずは信頼できる業者を探して、見積もりをとってみてはいかがでしょうか。