無色透明な塗料である「クリア塗料」はデザイン調サイディングの外壁などの塗り替えなどに使用されます。
既存のデザインを活かしたまま塗装ができるというのがメリットであるクリア塗装ですが、「失敗した」という意見もみられるようです。
ここではクリア塗装のメリット・デメリット、塗装を行う上での注意点などを紹介していきます。
外壁塗装のクリア塗装は失敗しやすい?
クリア塗装が失敗しやすいという意見・体験談がネット上でも一定数ささやかれています。
その理由として多いのは、クリア塗装と外壁の相性に関する情報・知識が不足していたり、塗装業者の技術が伴っていなかったりすることだと思われます。
どういった外壁に向いているのか、どういったメリット・デメリットがあるのかを踏まえて使用すれば、満足度が高い施工にすることができるでしょう。
外壁塗装のクリア塗装とは?
クリア塗装の特徴
クリア塗装とは無色透明な(素地が透ける)塗料を使った塗装のことです。色が付かないため、外装材そのままの色や柄・目を活かすことができ、その上で外壁の保護・つや出しなどを行えるのです。
本来の塗装は既存の外装材を「塗りつぶす」ので、凹凸は残りますが柄などは消えてしまいます。クリア塗装にすることで、外装材の質感・デザインを損なうことなく保護できるのが最大の特徴でありメリットと言えるでしょう。
クリア塗装の耐用年数
クリア塗料と言っても原料の違いで数種類が存在し、それぞれで耐用年数も違ってきます。
一般的な種類として以下のものがあります。
塗料 | 平均耐用年数 |
---|---|
アクリル樹脂塗料 | 3~5年程度 |
ウレタン樹脂塗料 | 5~7年程度 |
シリコン樹脂塗料 | 7~12年程度 |
ラジカル制御型塗料 | 7~18年程度 |
フッ素樹脂塗料 | 12~15年程度 |
無機系塗料 | 15~18年程度 |
基本的に耐用年数と単価は比例します。
安い塗料で費用を抑えても次回の塗り替えまでの間隔が短くなり、都度足場掛けの費用もかかるので、ある程度品質の高い塗料を選んだ方が長期的なコストとしては抑えられるかと思います。
また、耐用年数は地域や環境で誤差が生じます。
クリア塗装を業者に依頼する場合の相場
それぞれのグレードでどのくらいの価格差があるか比べてみましょう。
塗料 | ㎡単価の相場 |
---|---|
アクリル樹脂塗料 | \800~1,500程度 |
ウレタン樹脂塗料 | \1,100~2,500程度 |
シリコン樹脂塗料 | \1,500~3,500程度 |
ラジカル制御型塗料 | \1,500~4,500程度 |
フッ素樹脂塗料 | \2,000~3,800程度 |
無機系塗料 | \2,500~4,500程度 |
クリア塗装は基本2工程仕上で、通常の塗装の3工程より少なく済むため、単価は若干下がる傾向にあります。
先にも触れましたが、グレードの高い(耐用年数の長い)塗料を使用した方が次回の塗り替えまでの間隔が開くため、諸費用を考えると経済的と言えます。
予算の許す範囲で高品質な塗料を選びましょう。
なお、地方や施工業者によって価格の開きが結構あります。
また近年の材料の高騰によって上記の範囲に収まらない可能性もあります。
可能であれば複数の業者に相談(見積もりの依頼)をしてみましょう。
クリア塗装を業者に依頼する方法
クリア塗装は現状の壁質によって向き不向きがあります。
そのあたりを見極める知識や経験がある塗装専門業者に依頼することが必須と言えるでしょう。
外壁のクリア塗装を行うには塗装や足場架け、コーキングや下地補修などの工事が発生します。
依頼する場合は多業種の工事を段取りできる工務店やリフォーム専門業者などが考えられます。新
築の時からおつきあいのある工務店などがあれば安心感もあるでしょう。
また、それらの工事を一手に引き受けられる(自社施工できる)塗装業者も存在します。
そういった業者であれば下請けを介する中間マージンが発生しない分、リーズナブルに依頼できる可能性も高いです。
数件の業者に現場調査・見積もりをお願いする「相見積もり」で、価格や工事の内容を比べられると安心です。
外壁のクリア塗装は白くなる?
クリア塗装が白く濁ったような仕上がりになったという事例があるようです。
乾燥中の塗料の表面に、湿った空気中の水分が凝結してしまうのが原因と言われています。
結果、塗膜が白く濁り、つやが消えてしまいます。この状態は「白ボケ」「白化」「ブラッシング現象」などと呼ばれます。
一度白ボケが発生してしまと修正が難しいため、慎重な準備が必要となります。
- 下地塗装面の乾燥の確認
- 適切な温度・湿度の範囲内で塗装する
- 各工程の乾燥時間を確保する
- 塗料の撹拌時に空気を塗料内に空気を含みにくくする
- 塗料を水で希釈し、粘度を下げる
以上のような対策をとることで、白ボケのリスクを回避することができます。
クリア塗装のメリットとデメリット
クリア塗装は通常の塗装に比べてメリット・デメリットがはっきりしています。それぞれをしっかり確認しましょう。
クリア塗装のメリット
既存のデザイン・質感を保つ
外壁のデザインや質感にこだわりが有り、塗りつぶしの塗装をしたくない部分には、無色透明なクリア塗装がおすすめです。
現在の外壁のデザインや状態が気に入っていて、それを活かしたまま保護したいというケースにぴったりと言えます。
つやが出る
クリア塗装を施すと外壁につやを与えられます。
つやにも段階があり、ピカピカしたものから控えめなもの、つや消しまで選択肢が有り、サンプルや施工例を見ながら選ぶこともできます。
外壁の保護
外壁の美観を保つことと同じくらい大切な塗料の役目として、外壁を保護するということがあります。
クリア塗装料にも他の塗料と同様に外壁を保護する機能が備わっています。
クリア塗料にも性能や機能性の異なる様々な種類が存在します。
予算と住環境との折り合いをつけて最適な塗料を選びましょう。
チョーキングが起こらない
塗装した表面の塗膜が劣化し、顔料が表面化すると、外壁を触ったときに手に粉が付くことがあります。
これを「チョーキング」と言うのですが、クリア塗料にはもともと顔料が入っていません。
なので塗装から年数が経ってもチョーキングが起きるリスクが無いのです。
塗装の工程が少ない
従来の塗装工程に比べてクリア塗装の場合は調色(色合わせ)の手間が無い他、塗装の工程が1回少ないため、工期の短縮や施工費の削減が期待できます。
クリア塗装のデメリット
以下のような条件・外壁の状況にはクリア塗装は適さないと言えます。
ヒビ割れ(クラック)が発生している・補修跡がある
ヒビ割れが発生している壁にはクリア塗装はおすすめできません。
理由として、クリア塗装自体にクラックの保護機能が無いことや、クリア塗装ではヒビ割れやその補修跡を隠すことができないことなどが挙げられます。
そしてこれは、ヒビ以外の補修跡がある場合も同じことが言えます。
つまり、劣化の状態がそのまま透けて見えてしまうのです。非常に見栄えの悪い仕上がりになります。
シーリング箇所
外壁の仕上げにサイディングをはじめとしたパネル状の外装材を貼る場合、つなぎ目(ジョイント)部分にはシーリング材(コーキング材)を注入して防水処理を施します。
雨水の侵入や構造材の劣化を防ぐ上で重要なシーリングですが、このシーリング部分には基本的にクリア塗装ができません。
シーリング材にクリア塗装が付着することで塗膜の汚染や剥がれ・割れなどが発生する恐れがあるため、シーリング部分をマスキングしてクリア塗料が付かないように施工しなければなりません。
特殊コーティングの壁
サイディングの中には光触媒やフッ素塗料・無機塗料などの特殊なコーティングをされたものがあります。
こういったコーティング面にクリア塗装を施すと、それらの特殊コーティングが剥がれてしまうことがあるようです。
使用しているサイディングの施工要領書やカタログなどに「クリア塗装不可」といった注意書きがされている可能性があります。
10年経っても色あせないサイディングなどの場合は特に確認が必要でしょう。
クリア塗装と相性の良い外壁は?
タイル調などの柄物サイディング
窯業系サイディングの中にはタイルやレンガの柄を施したものなど、細やかにデザインされたものがあります。
「塗装はしたいけど柄は残したい」という場合にはクリア塗装がおすすめできます。
ツートンカラーで仕上げた外壁とも相性が良いと言えるでしょう。
コンクリート・モルタル
独特の風合いの良さからコンクリート打ちっぱなしやモルタル素地を仕上げにする人も多いです。
それらにクリア塗装を使えば風合いを残しつつ傷を目立たなくしたり、汚れや雨水の侵入を防ぐなど、外壁を保護することができます。
「現在の質感・風合いを活かしたい」、「劣化が少ない・目立たない」、クリア塗装はそういった外壁に向いています。
築20年の外壁でもクリア塗装は可能?
クリア塗装は損傷部や補修跡などがそのまま見えてしまう工法なので、外壁が劣化していない状態で行うのが理想です。
その観点で言うと、築20年の外壁ではクリア塗装の良さは発揮できないでしょう。
クリア塗装を行うのであれば築7年以内から状態が良くても築10年以内であることが理想です。
チョーキングしているとクリア塗装ができない?
チョーキングが進行している外壁にそのままクリア塗装を行うと、つやが出ず白くぼやけた仕上がりになる恐れがあります。
また、チョーキングの白い粉が外壁と塗装の間に入って密着性をさまたげ、塗料本来の耐久性が発揮できなくなります。
チョーキングの原因には経年劣化や紫外線などがあります。塗装を行う前にチェックするべきでしょう。
外壁のクリア塗装でdiyは可能?
外壁のクリア塗装をDIYできるか否かで言うと、「できる」と言えます。ただしリスクは多いです。
前述した「白ボケ」やコーキング部の養生など、技術的に難しい部分が多く、失敗時のリカバリーが難しいです。
また、塗装工事は高所作業になることが多いです。
どうしても何かしらの足場は必要になりますし、仮にはしごで作業するにしても転落の危険がつきまといます。
「DIYは可能だが推奨しない」というのが結論です。
外壁クリア塗装の手順
一般的な外壁塗装の場合、
下塗り→中塗り→上塗り
の3工程が存在します。
一方でクリア塗装の場合は、
中塗り→上塗り
と、下塗りを省略し2工程とすることができます。
それ以外にも、パテやコーキングによる補修や下地処理といった作業も省かれます(これらが必要な傷んだ外壁ではクリア塗装は不向きです)。
その代わりに、現状の外壁のチェックは入念に行った方が良いでしょう。
以下が、クリア塗装のおおまかな手順になります。
- 外壁チェック(契約前)
- 塗料の検討→見積もり→契約
- 足場掛け
- 養生・マスキング
- 中塗り→乾燥→上塗り
- 養生・足場撤去
外壁塗装のクリア塗装で失敗しないためのポイント
クリア塗装が可能な条件やデメリットなどを把握して、失敗を防ぎましょう。
- 新築から10年以内
- チョーキングが発生していない
- ひびや破損などの劣化が無い
- クリア塗装との相性が悪いコーティング・塗料ではない
- コーキング上の塗装を回避できる
- 定期的なメンテナンスが可能
- (過去にクリア塗装を行っていない)
以上が基本的なチェックポイントになります。
これらに該当しない場合、クリア塗装を回避した方が良いかもしれません。
業者に問い合わせ・依頼をする前にこれらを確認しておくと安心です。
外壁クリア塗装2回目を実施する際の注意点
過去にもクリア塗装を行った外壁に再度クリア塗装を検討する場合、以前の塗装の材料の内容を把握している同じ塗装業者に依頼することを勧めます。
別な業者に頼まざるを得ない場合は前回の施工情報の伝達が重要になるでしょう。
洗浄や下地処理が適切に行われていないと施工が一層難しくなります。
凹凸やムラ・白濁などのリスクも考えられるので、業者ともよく相談しましょう。
「外壁塗装 クリア塗装 失敗」を検索する人がよく思う質問4選
まとめ:デメリットや注意点を参考にクリア塗装の検討を!
ここまで、外壁のクリア塗装について紹介してきました。
クリア塗装は向き不向きがはっきりしており、デメリットも存在するので、少々敬遠してしまいがちですが、適合条件をしっかり理解したうえで検討すれば、住宅のデザインを活かしたうえで建物を保護できるステキな施工となり得ます。
外壁の事前確認や情報収集を行い、塗装業者と情報を共有して、ベストな方法で施工できるよう準備をすすめて下さい。