塗装やモルタル・サイディングなど、外壁の仕上げには、デザインを演出するためのものであるのはもちろんですが、実はそれ以上に「家を保護する」という重要な役割があります。
さまざまな気候や環境により、年々劣化していくのはもちろん、近年脅威を増している感のある自然災害によっても、外壁はいたんでいき、剥がれやヒビなどの損傷が発生していきます。
外壁の剥がれは、放置しておくと躯体(内部)のいたみにも直結するので、早急な対応・修繕が必要です。
ここでは、外壁剥がれへの対応方法をご紹介していきます。
外壁が剥がれたときの応急処置は?
「このくらいなら…」という小規模な剥がれの場合、自分で処置したくなるかもしれません。
が、小規模の補修でも業者に依頼するべき場合もあります。
あなたの状況と以下の内容を照らし合わせてみてください。
自分で応急処置をする
部分補修レベルであれば、器用な方でしたらDIYも可能です。
主なやり方としては、防水テープやシーリングで剥がれ・穴を埋める方法や、養生シート類を貼って損傷個所を覆う「雨養生」という方法などがあります。
- 防水テープ:文字通り、防水加工がされているテープ。設備業者が配管まわりに使うものや外壁下地(サッシまわり)に使われるものなど数種あります。
- シーリング(コーキング):目地(ジョイント部)防水などに使用します。隙間・穴埋めの必需品です。
- 養生シート(ブルーシート):工事現場で多用される他、アウトドアの際の敷物として使われたりもするブルーシートは、厚手のものですと防水性能が高いです。台風被災地の屋根の応急処置に使われている映像を見ることも多いです。
いずれもホームセンターで手に入るものばかりで、費用もそれほどかかりません。
業者に依頼する
足場が必要な高所であったり、ご高齢な方などDIYに不安を感じる場合は、無理せず業者に依頼した方が良いです。
素人では発見できない劣化部分を見落としたまま、外壁損傷が進んでしまったということが無いようにするという意味でも、業者に依頼する意義があると思います。
また、剥がれの原因に施工不良が考えられる場合は、自分で対処せず、前回施工を行った業者にすみやかに連絡すべきです。
まず、前回の施工からの年数を確認しましょう。
塗装には適正な耐久年数があります(詳細は後述)。
それよりも極端に短い(劣化が早い)場合は施工不良の可能性が考えられます。
この場合、クレーム対応として無償で修繕してもらえる場合もあります。
まずは迅速に状況を整理し、施工を行った業者へ連絡しましょう。
外壁が剥がれたときの応急処置方法は?
防水テープなどを使う
剥がれ箇所が広範囲ではない、また幅が広くない場合は防水テープで雨水の侵入を防ぐことができます。
業者が使用することが多いものですが、はさみで切れる、重ね貼りできるなど、素人でも扱いやすいものもたくさんあります。
その中でも、隙間ができないよう粘着性が高く、ある程度厚みがあり、局面や凹凸にも馴染むものを選びたいところです。
ビニールシートなどを使う
広範囲にわたって応急処置が必要な場合は、ビニールシートが有効でしょう。
ブルーシートや防炎シートなどが有名ですが、いずれも厚手のものを選ばないと防水性能が低い(水を通す可能性がある)ので注意しましょう。
雨風が入り込んだり飛ばされたりしないよう、しっかりと留めるようにします。
外壁が剥がれる原因は?
「まだ塗装したばっかりなのに…」と、業者に頼んでからそんなに年数が経っていない気がする場合は、業者による施工になにかしらの問題点があった可能性もあります。
ここでは、外壁の剥がれにつながる原因にどのようなものがあるかをご紹介します。
施工不良のパターン
材料にもよりますが、外壁塗装の耐久年数は10年程度であることが多いです。
施工から10年以上経過しての剥がれであれば、経年劣化と考えてまずまちがいありません。
が、例えば2~3年程度で剥がれが生じているのであれば、それは施工不良である可能性があります。
その場合は、施工を行った業者・工務店等に連絡して対処してもらいましょう。
剥がれや浮き等、どのような状況になっているか、できるだけ具体的に把握して説明し、直接見てもらって改善策を検討してもらうとよいでしょう。
洗浄や乾燥不足のパターン
外壁塗装の持ちに最も影響があるのは、仕上げではなく洗浄などの下地処理です。
壁に付着した色々な汚れを落とすため、以下のような工程を行っていたでしょうか?
- 高圧洗浄機やブラシ等を使っての「水洗い」
- 上記で落としきれない汚れをスクレーパー(ヘラ)や電動工具(グラインダー等)で落とす「ケレン」
- 塗装の付着率を上げるための研磨「足付け」
これらの作業をしていても乾燥が足りない場合、問題が生じる可能性があります。
本来、外壁塗装は下塗り・中塗り・上塗りと3工程あることが多いのですが、それぞれの施工後に充分な乾燥をさせないと塗膜が定着せず、長持ちしません。
塗料にはそれぞれ、メーカーが定める塗装間隔(乾燥に必要な時間)が定められています。
無理のある短い工程を組まれていたりすると、キレイに仕上がって見えても、早く劣化する壁が出来上がってしまうので注意しましょう。
塗料の選定や使用ミスのパターン
外壁の下地(建材や状態)に合った塗料を選定されていなかった可能性もあります。
外壁塗装の1回目にあたる「下塗り」は、下地となる建材の表面を整え、中塗り以降の塗料の定着を良くすることが目的の、シーラーやフィラーと呼ばれる「下塗り剤」です。
これら下塗り剤は下地の材質(モルタルや金属・窯業系サイディングなど)に合わせ、多種存在しますので、材質に合わせて選ばないと定着が悪くなってしまいます。
自然災害のパターン
紫外線や雨風にさらされるだけで塗膜の劣化は進みます。
さらに、塩や砂、強風時の飛来物がぶつかれば、剥がれが発生する可能性も高まることでしょう。
台風などの天災時には、家全体の被害を確認し、早めの対応を心掛けたいものです。
経年劣化のパターン
新築にしても塗り替えにしても、外壁の塗装を施工してから10年以上経過していれば、経年劣化と判断してよいでしょう。
使用された塗料の耐久年数(寿命)が過ぎたことによるものです。
また、海沿いの地域などで潮風による塩害がある場合や、強い直射日光(紫外線)を浴びることがある場合も、塗膜へのダメージも大きい環境では、10年を待たずに劣化を起こす可能性もあるでしょう。
ここで挙げた例でいくと、「自然災害」「経年劣化」の場合は業者の落ち度ではありませんので、相場通りの実費がかかると考えられます。
外壁剥がれを放置するとどうなるの?
外壁仕上げは建材そのものの保護はもちろん、下地材や断熱材を保護する役割があります。
そのため、剥がれなどの損傷を放置しておくと下地・構造材や断熱材が傷みはじめます。
日本の戸建て住宅やアパートの場合、柱や梁・土台などの構造材は大抵木材です。
防腐処理を施している部分もありますが、やはり水分には弱く、雨が浸透し続けるとやがて腐っていきます。
構造材のいたみは建物の寿命を縮めますし、その修繕には大きな費用と工期がかかります。
外壁の剥がれを早急に直すことが、結果的に後の経済的な損失をおさえることになるでしょう。
外壁剥がれ補修を自分でDIYする方法は?
シーリング材で補修
剥がれがごく小さい、範囲が狭いものであれば、シーリング材での補修は有効です。
なお、シーリングに塗装を施すことを検討しているなら、塗装が乗る「変性シリコン」のシーリング材を選びましょう。
通常の「シリコン」は塗料をはじいてしまいます。
スプレーやセメント系で補修
モルタル壁の細いヒビ割れにはセメントで補修することも可能です。
セメント粉をスティック状もしくはスプレー状にした商品が存在します。
ネット上でも「セメント粉」「スティック」「スプレー」等検索すれば多数見つかるでしょう。
商品の説明に記載されている使用法を守り、また不要な箇所に飛散しないよう養生を行ってから作業するようにしましょう。
外壁剥がれ補修を自分で処置していれば大丈夫?
ざっくりと言ってしまえば、自分で処置したものはあくまでも応急処置ととらえた方がよいです。
特に経年劣化の場合は、一部を修繕しても、他の面もその損傷に近い状態まで劣化が進んでいるとみるべきですし、あなたが発見できなかった小さな剥がれやヒビから、構造材をいためてしまっている場合もあるかもしれません。
経年劣化による外壁の剥がれを発見したら、応急処置しつつ全体の再塗装をプロに依頼する計画を立てた方が良いです。
それが家・建物の寿命を延ばす秘訣だと思います。
「外壁 剥がれ 応急処置」を検索する人がよく思う質問4選
まとめ:外壁が剥がれたときの応急処置は適切な対応が大切
結論として、外壁の剥がれはプロに依頼するべきと記しましたが、繁忙期などは業者もすぐに入れないこともありますし、積雪地帯などでは外部補修に向かない季節もあります(徹底して養生をすれば不可能ではないですが、余計に工期・予算がかかるかもしれません)。
なので、補修の一手目として、適切な応急処置は知っておくにこしたことはありません。
- 施工不良によるものかの判断(年数)→施工した業者に状況連絡→補修依頼
- 前回塗装(外装仕上)より10年前後経過→応急処置検討
- 広範囲の剥がれ等の処置→養生シート貼+防水テープ
- 細いヒビの処置→シーリング材・セメント材スティックやスプレー・防水テープ等
応急処置に必要な材料は、いずれもホームセンターやネットなど、手軽に購入できるものばかりです。
面倒だとそのまま放置せず、早急に対処するのが大切です。
また、応急処置した箇所の経過も、工事が入るまでの間に状況が悪化していないか、マメに確認できれば安心です。